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SIerはやめとけと言われる理由とAI時代のエンジニア生存戦略

複数のディスプレイが並ぶデスク上で、コードとAIプロンプトの画面が立ち上がっている様子
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「SIerはやめとけ」という言葉は、IT業界を目指す人が一度は耳にするフレーズです。これまでは、多重下請け構造による長時間労働や、特定の技術に偏ったレガシーな業務環境がその主な理由とされてきました。しかし、生成AIが瞬時に精度の高いコードを出力し、システム設計の補助すら行うようになった現在、この言葉が持つ意味合いは大きく変化しています。これからの時代は「労働環境が厳しいから」という理由だけでなく、「AIによって代替されやすい業務から抜け出せないから」という観点で、自身の立ち位置を見極める必要があります。

現在システムエンジニアとして働く方や、これから業界へ足を踏み入れる方の多くは、AIが台頭する中で自分のキャリアがどうなっていくのか、強い不安を抱えているのではないでしょうか。コーディングやテストといった下流工程の作業がAIによって自動化されていく中で、「自分の仕事がなくなってしまうのではないか」「今のままのスキルで将来通用するのか」という悩みは、決して杞憂ではありません。重要なのは、AIを脅威として捉えるのではなく、AIにはできない業務領域を見極め、そこに自身の価値をシフトしていくことです。

本記事では、なぜSIerでのキャリアに警鐘が鳴らされるのかを紐解きながら、AI時代においてエンジニアが直面するリアルな課題と、生き残るための具体的な戦略を整理します。企業タイプ別や属性別の現状を細かく分析し、AIが業務・スキル要件・キャリア判断にどのような影響を与えるのかを具体的に提示します。今後のキャリア設計に迷いを感じている方が、次の一歩を踏み出すための明確な判断基準を提供します。

記事のポイント
  • ネット上の口コミや相談から見えてくる、エンジニアが抱えるキャリアへの危機感とリアルな実態
  • ユーザー系、メーカー系、独立系など、企業タイプ別に異なるAI導入の影響と求められるスキルの変化
  • 未経験、文系、新卒、営業といった属性ごとに直面する壁と、AI時代を生き抜くための新しい価値の生み出し方
  • AIが代替する作業と人間のエンジニアに残り続ける価値の境界線、そして今取るべき具体的な行動

目次

SIerはやめとけと言われる実態と企業タイプ別の傾向

ホワイトボードに描かれた複雑なシステム構成図と、それを見つめながら議論する開発現場の様子

この章では、SIerやめとけと言われる背景にある実態を、ネット上の声や企業タイプ別の特徴から紐解きます。どのような構造的な課題があり、そこにAI技術の波がどう影響を及ぼしているのかを整理し、自身のキャリアを客観的に評価するための判断材料を提供します。

ネット掲示板の「2ch」等で語られる現場のリアルな口コミ

IT業界のリアルな声が集まる場所として、古くから2ch(現5ちゃんねる)などの匿名掲示板があります。こうした場所で「SIerやめとけ」と語られるとき、最も多く挙がるのは「技術力が身につかない」「調整業務ばかりで開発ができない」という悲鳴です。実際に現場に出ると、Excelでのテスト仕様書作成や、協力会社との進捗確認ミーティングに1日の大半を費やすことも珍しくありません。

これまでは、調整能力やプロジェクト管理能力も立派なスキルとして評価されてきました。しかしAI時代において、この状況は大きなリスクを孕んでいます。なぜなら、議事録の作成や進捗データの集計、さらにはテストケースの自動生成に至るまで、管理・調整業務の一部がAIツールによって劇的に効率化されつつあるからです。

これまでのように「コードは書けないが管理はできる」というだけの状態では、AIを駆使して高速に開発を進めるモダンなチームには太刀打ちできなくなります。読者が今取るべき行動は、日々の業務が単なる「連絡係」になっていないかを確認し、システム全体のアーキテクチャ設計や、AIを用いた業務効率化の提案など、人間ならではの高度な判断が求められる領域へ意識的に関与していくことです。

「なん j」等で指摘される多重下請け構造と労働環境の過酷さ

なん jなどのコミュニティでも、SIerの労働環境に対する辛辣な意見が絶えません。特に問題視されるのが、日本のIT業界特有の「多重下請け構造」です。元請けから2次受け、3次受けと案件が流れるにつれて利益率は下がり、末端の現場では厳しい納期と低単価での労働が常態化しています。

この構造の中で働くエンジニアは、仕様変更のしわ寄せを直接受けやすく、トラブル対応による長時間労働に疲弊しがちです。具体的な場面として、週末に突然発生した障害対応のために呼び出され、原因不明のエラーログと何時間も格闘するといったケースが挙げられます。

AI技術の進化は、この下請け構造にメスを入れる可能性があります。コーディングやバグ改修といった作業の多くがAIによって高速化されるため、単純な「人月商売(労働時間=売上)」というビジネスモデル自体が崩壊しつつあるのです。多重下請けの下流工程に留まることは、将来的にAIに仕事を奪われるリスクと直結します。今後は、言われたものをただ作る作業から脱却し、要件定義などの上流工程へシフトするか、あるいは新しいAIツールをいち早く導入して生産性を何倍にも高める側に回るかの判断が求められます。

「なんJ」から読み解くAI時代におけるキャリア停滞の危機

さらに同じくなんJなどのネット上の声から読み取れるのは、将来への漠然とした不安、すなわち「キャリア停滞の危機」です。特定の古い業務システムのお守りばかりをしていて、最新の技術トレンドに全く触れられない環境にいるエンジニアは少なくありません。

例えば、10年以上前に構築されたオンプレミスのシステム保守を担当し、独自の古いフレームワークしか触ったことがない場合、市場価値は徐々に低下していきます。ここにAIの波が押し寄せると、レガシーコードのリファクタリングや別言語への移行すらもAIが半自動で行うようになり、古い技術に依存した保守要員の存在意義が薄れてしまいます。

AI時代に残る価値は、「なぜそのシステムが必要なのか」「ビジネス課題をどう解決するのか」という根本的な問いに向き合える力です。もし現在の環境で最新技術に触れる機会がないと感じるなら、個人の学習としてAIを活用した小規模なアプリケーション開発を試みるなど、市場の技術トレンドと自身のスキルのギャップを埋める行動を今すぐ始める必要があります。

「知恵袋」の相談から見る将来への不安とAIによる代替リスク

Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトを見ると、「今後AIがコードを書くようになれば、プログラマーの仕事はなくなりますか?」という切実な相談が多数寄せられています。ここで語られる「SIerやめとけ」というアドバイスの裏には、AIによる代替リスクへの強い恐怖が存在します。

実際に、GitHub CopilotなどのAIアシスタントの登場により、定型的な関数やクラスの作成、さらにはテストコードの実装などは、作業を速められる場合があります。しかし、出力の検証や設計・セキュリティ面の判断は依然として人間が行う必要があります。そのため、今後は単に「仕様書通りにコードを書く」だけの作業は業務における比重が下がる可能性があります。

しかし、これは「エンジニアの仕事がなくなる」ことを意味しません。AIが生成したコードがセキュリティ要件を満たしているか、既存の複雑なシステムと整合性が取れているかを判断し、責任を負うのは人間のエンジニアだからです。読者が注力すべきは、単なるプログラミング言語の文法暗記ではなく、システム全体の設計思想(アーキテクチャ)を理解し、AIを「強力な部下」として使いこなすマネジメントスキルの習得です。

「ユーザー系」は内製化の波とAIツール導入でどう変わるか

企業タイプ別に見ていくと、親会社のシステム子会社として機能する「ユーザー系SIer」は、比較的安定していると言われます。しかし、ユーザー系SIerやめとけという声がないわけではありません。親会社の意向に絶対服従である点や、コストセンターとして扱われやすいため給与水準が上がりにくいといった悩みが存在します。

近年、ビジネスのスピードを上げるために、企業がシステム開発を外部に丸投げせず、自社内にエンジニアを抱える「内製化」の動きが加速しています。ユーザー系SIerはこの内製化の最前線に立たされます。さらにAIツールの導入により、これまで手作業で行っていたデータ抽出や軽微なシステム改修が、ビジネス部門(非エンジニア)でもノーコードツールやAIプロンプトを通じて行えるようになってきています。

この変化の中で、ユーザー系SIerのエンジニアに求められるのは、単なるシステム開発者ではなく、親会社のビジネスそのものを理解した「ITコンサルタント」としての役割です。AIには親会社の複雑な社内政治や業界特有の商習慣を完全に理解することはできません。ビジネス部門と密に連携し、AIを活用した新しい業務プロセスを提案できる人材こそが、今後のユーザー系において生き残る鍵となります。

「メーカー系」特有のハードウェア依存とクラウド時代の限界

パソコンや通信機器などのハードウェアメーカーを親会社に持つ「メーカー系SIer」も、特有の課題を抱えています。メーカー系SIerやめとけと言われる最大の理由は、親会社のハードウェア製品を売ることが大前提となるビジネスモデルにあります。

クラウドコンピューティングが主流となり、AWSやAzureといったプラットフォーム上で柔軟にシステムを構築できる現代において、「自社製のサーバー機器を導入すること」を前提とした提案は、顧客にとって最適解ではないケースが増えています。顧客のニーズと自社製品の押し売りとの間で板挟みになり、疲弊するエンジニアは少なくありません。

AIの進化は、このクラウド化の波をさらに加速させています。AIモデルの学習や推論には膨大な計算資源が必要であり、柔軟にスケールできるクラウド環境が不可欠だからです。メーカー系に所属しながら価値を高めるためには、ハードウェアの知識を活かしつつ、クラウド技術とAIを組み合わせたハイブリッドなアーキテクチャを設計できるスキルを磨くことが重要です。自社製品に固執せず、市場全体を見渡す視点を持つことがキャリアの防衛策となります。

「独立系」における下請け構造とAIコード生成がもたらす影響

親会社を持たず、独自の営業力で案件を獲得する「独立系SIer」は、実力主義で様々なプロジェクトに関われる魅力がある一方で、独立系SIerやめとけという声も根強くあります。その理由は、前述した多重下請け構造の最下層に位置することが多く、労働環境が過酷になりやすいからです。

独立系SIerの多くは、エンジニアの「頭数」を揃えて労働力を提供することで利益を得ています。しかし、AIによるコード生成技術の普及は、このビジネスモデルを根本から破壊する力を持っています。これまで10人のプログラマーが1ヶ月かけていた作業を、AIツールを駆使する1人の熟練エンジニアが数日で終わらせてしまう時代が近づいているからです。

頭数合わせの労働力としての価値は、今後急速に暴落します。独立系で働くエンジニアが生き残るためには、特定の顧客の業務ドメインに深く精通するか、最先端のAI技術を用いた開発手法を組織内でいち早く確立し、「AIを活用して従来よりも低コストかつ高品質にシステムを納品できる」という強みを打ち出す必要があります。言われたことをこなす労働者から、効率化のプロフェッショナルへの脱皮が不可欠です。

以下の表は、各企業タイプにおける特徴と、AI時代に受ける影響、そして生き残るために必要なスキルを比較したものです。現在の自分の立ち位置を確認し、次にどのようなスキルを獲得すべきかの判断材料として活用してください。

← 表は左右にスクロールできます →

企業タイプ 基本的なビジネス構造 AI導入による主な影響 AI時代に求められるスキルと行動
ユーザー系 親会社のシステム運用・保守が中心 ルーチン作業の自動化、非エンジニアによる軽微な開発の増加 親会社のビジネス理解、業務改善コンサルティング、AIツールの社内導入支援
メーカー系 親会社のハードウェア製品とセットでの提案 クラウドへの移行加速、オンプレミス依存からの脱却要求 クラウドアーキテクチャ設計、ハードとAI(エッジAI等)を連携させる技術力
独立系 多様な案件を受託、多重下請けに組み込まれやすい 人月商売の崩壊、単純なコーディング案件の激減 AI開発ツールの習熟による圧倒的な生産性向上、特定業務ドメインの深い知識

この表から判断できるのは、どの企業タイプに属していても、「従来通りのやり方」を続けることはリスクでしかないということです。自社の弱みを理解し、それを補うスキルを意識的に獲得していく姿勢が求められます。

「大手」特有のマネジメント偏重と技術力空洞化のリスク

業界を牽引する大企業であっても、大手SIerやめとけという意見は存在します。大手の新卒カードは価値が高い一方で、入社数年でプログラミング現場から引き離され、協力会社のマネジメントや予算管理ばかりを任されるケースが多いからです。

この「マネジメント偏重」は、技術力の空洞化を招きます。具体的な場面として、最新のクラウドサービスやAIライブラリの仕様を全く理解していないプロジェクトマネージャーが、現場の実態に合わない無理なスケジュールを引いてしまい、プロジェクトが炎上するといった事例が後を絶ちません。

AIがプロジェクト管理の一部(タスクの自動割り当てや進捗の予測)を代替し始める中、技術を理解していない管理職は不要になります。大手に所属するエンジニアこそ、マネジメント業務に追われながらも、自己研鑽として最新の技術トレンドをキャッチアップし、AIが生成したコードや設計の妥当性を自ら判断できる「技術のわかるマネージャー」を目指すことが必須の生存戦略となります。

厳格な「金融」向けプロジェクトにおけるレガシーシステムとAI移行の壁

SIerの案件の中でも、特に過酷とされがちなのが銀行や証券などの金融向けシステム開発です。金融SIerやめとけと言われる理由は、絶対にシステムを止めてはならないという重圧と、そのために設けられた膨大で厳格なルール、そして何十年も前に構築されたレガシーシステム(COBOLなど)の保守を強いられる点にあります。

金融機関はセキュリティやコンプライアンスに対して非常に保守的であるため、最新のAIツールやクラウドサービスの導入が他業界に比べて遅れがちです。そのため、エンジニアは非効率な手作業でのテストや、紙ベースでの承認プロセスに時間を奪われることになります。

しかし、水面下では金融業界でもAIを活用した不正検知や、顧客対応の自動化に向けた動きが確実に進んでいます。レガシーシステムの知識は、システムを安全に最新環境へモダナイズ(刷新)していく上で実は貴重な資産となります。古いシステムの仕様を正確に理解し、それをAI時代に即したセキュアなアーキテクチャへと段階的に移行させるための橋渡し役となれるかが、金融領域で価値を残すための重要なポイントです。

「金融系」子会社が直面する親会社依存のリスクとシステムモダナイズ

メガバンクなどのシステム子会社である金融系SIerの場合も、状況は似ています。金融系SIerやめとけと言われるのは、親会社の巨大なシステムの維持管理が主業務となり、新しい技術に挑戦する裁量が極めて少ないからです。

日常的な業務は、既存システムのパッチ当てや、法律変更に伴う軽微な仕様変更などが中心となります。こうした環境では、世の中でAIがどれほど進化しても、自分の業務には無関係だと感じてしまうかもしれません。しかし、親会社である金融機関自体が、フィンテック企業との競争に勝つためにAIの導入を急務としています。

この環境下でエンジニアが取るべき行動は、受け身の保守作業から抜け出し、システムのモダナイゼーション(近代化)計画に積極的に関与することです。例えば、「このレガシーなバッチ処理は、AIを用いた新しいデータ分析基盤に置き換えられないか」といった提案を行うことです。親会社の業務知識と、最新のAI・クラウド技術の両方を持つ人材は、金融系SIerの中で極めて稀有であり、確固たる地位を築くことができます。

SIerはやめとけと言われる属性別の悩みとAI時代の生存戦略

付箋が貼られたカンバンボードの前で、多様なバックグラウンドを持つメンバーがAIを活用した新しいワークフローについて議論している様子

ここからは、未経験者、文系出身者、新卒、営業職といった「属性別」の悩みに対し、AIがどのような影響を与え、どのようにキャリアを築いていけばよいのかを解説します。立場によって直面する壁は異なりますが、AIを活用して自身の価値を再定義するという基本戦略は共通しています。

「未経験」からの参入ハードルとAIが代替するコーディング業務

近年、異業種からIT業界を目指す人が増えていますが、未経験SIerやめとけという厳しい声も少なくありません。かつて未経験者は、テスト実行や簡単なバグ修正といった「誰でもできる下流工程」からキャリアをスタートし、徐々にスキルを身につけていくのが王道でした。

しかし、AIの台頭により、この参入ルートが閉ざされつつあります。簡単なテストコードの作成やドキュメントの翻訳、定型的なバグの修正は、AIが最も得意とする領域だからです。未経験者が現場に入っても、任せられる「簡単な仕事」自体が存在しなくなる未来がすぐそこまで来ています。

未経験から挑戦する方が今取るべき行動は、プログラミング言語の構文を丸暗記することではありません。プログラミングや設計の基礎を身につけた上で、AIツール(ChatGPTやGitHub Copilotなど)を当たり前のように使いこなし、「AIを使って開発スピードを上げる技術」を併せて身につけることです。面接や実務において、基礎的なコーディング能力のアピールに加え、「AIを補助として活用し、仕様のアプリをより効率的に構築できます」と示せることで、評価につながる企業も増えつつあります。

「新卒」配属ガチャのリスクとAI時代に求められるファーストキャリア

新卒でSIerに入社する場合、SIer新卒やめとけと言われる最大の理由は「配属ガチャ」のリスクです。本人は最新のWebアプリケーション開発を希望していたにもかかわらず、配属先が古いシステムの保守運用部門であったり、Excelでのテスト証跡作りばかりの現場であったりすることは珍しくありません。

最初の数年間でどのような技術に触れるかは、エンジニアのその後のキャリアを大きく左右します。特にAI時代においては、若いうちに「システムがどうやってビジネス価値を生み出しているのか」「最新の技術をどう組み合わせて問題を解決するのか」という感覚を養うことが不可欠です。古い環境に閉じ込められてしまうと、その後の軌道修正が非常に困難になります。

配属ガチャに外れたと感じた新卒エンジニアが取るべき行動は、会社の業務外でモダンな技術に触れ続けることです。オープンソースプロジェクトへの参加や、個人でのAIアプリ開発を通じて、市場価値の高いスキルを自ら獲得しにいく姿勢が求められます。また、配属先でも「この手作業のデータ集計は、PythonのスクリプトとAI APIを使えば自動化できます」といった小さな改善提案を続けることで、周囲からの評価を変え、希望する業務へ近づくチャンスを作ることができます。

「文系」出身者がぶつかる技術の壁とプロンプトエンジニアリングの可能性

日本のSIerは文系出身者を広く採用していますが、文系SIerやめとけという声も根強いのが実情です。その背景には、情報工学などの基礎知識がないまま現場に放り込まれ、コンピュータの仕組みやネットワークの概念が理解できず、技術的な壁にぶつかって挫折してしまうケースが多いことが挙げられます。

しかし、AIの進化は文系出身者にとって大きな追い風となる可能性があります。AIに対して的確な指示を出し、望む結果を引き出す「プロンプトエンジニアリング」においては、複雑なアルゴリズムの知識よりも、論理的な思考力や、言語を正確に操る力が求められるからです。

文系出身のエンジニアが価値を発揮するためには、技術の深い部分(メモリ管理やハードウェア制御など)で理系出身者と勝負するのではなく、顧客が抱える曖昧なビジネス要件を正確に言語化し、それをAIが理解できるプロンプトやシステム要件に落とし込む「通訳」の役割を担うことです。ドキュメント作成能力やコミュニケーション能力といった文系の強みを、AIをコントロールする力へと転換していくことが重要です。

「営業」職に課せられるノルマとAIソリューション提案へのシフト

エンジニアだけでなく、SIer営業やめとけという声も多く聞かれます。SIerの営業は、形のないシステムを売るという難しさに加え、エンジニアの稼働率を維持するための厳しいノルマが課せられることが多いからです。顧客の要望と、開発現場のリソース不足の間で板挟みになり、精神的に追い詰められる営業担当者は少なくありません。

これまでSIerの営業は、「何人のエンジニアをいつから投入できるか」という人材派遣的な提案が主流でした。しかし、AIによって開発の生産性が飛躍的に向上する中、顧客が求めているのは「何人投入するか」ではなく「どのようなAI技術を使って、自社の業務をどれだけ効率化してくれるのか」という具体的なソリューション(解決策)の提案です。

これからのSIer営業に求められるのは、自社が提供できるAIソリューションの価値を深く理解し、顧客のビジネス課題に直結する提案を行うコンサルティング力です。単なる御用聞き営業から脱却し、最新のAIトレンドを武器として顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)を牽引するパートナーになること。それが、過酷なノルマ営業から抜け出し、自身の市場価値を高める唯一の道です。

俗説:大手企業にいれば一生安泰というのは本当か?

ここで、業界内でまことしやかに語られる一つの俗説について触れておきます。「大手のSIerや、その系列企業に入ってしまえば、とりあえず一生安泰である」という考え方です。確かに、大手企業は福利厚生が充実しており、資本力があるためすぐに倒産するリスクは低いです。

しかし、「会社が存続すること」と「個人のエンジニアとしてのキャリアが安泰であること」は全く別問題です。AIという破壊的な技術革新が起きている現在、社内の古いルールや既存のビジネスモデルに胡座をかいて技術のキャッチアップを怠れば、いざ会社が大規模なリストラや事業転換を行った際、社外で全く通用しない人材になってしまいます。

真の意味での「安泰」とは、どの企業に属しているかではなく、「明日会社がなくなっても、別の場所で求められるスキルと実績を持っているか」によって決まります。大手の看板に寄りかかるのではなく、大手だからこそ扱える大規模なデータや潤沢なリソースを利用して、自分自身の市場価値を磨き続けることこそが、最も確実なリスクヘッジとなります。

激動の時代に生き残るエンジニアの共通点

ここまで、様々な角度からSIerの実態とAIによる影響を整理してきました。では、この激動の時代に生き残り、価値を高め続けるエンジニアにはどのような共通点があるのでしょうか。

それは、「変化を楽しむ適応力」と「課題解決への執着」です。AIが新しいコードを書き、新しいツールが毎日リリースされる現状を「覚えることが多すぎて辛い」と捉えるか、「面倒な作業をAIに任せて、もっと面白い設計に集中できる」と捉えるかで、キャリアの軌道は大きく分かれます。

生き残るエンジニアは、技術を目的化せず、あくまで「目の前のビジネス課題を解決するための手段」として扱います。顧客が本当に求めているのは、美しいコードではなく、売上の向上やコストの削減です。AIという強力な手段を手に入れた今だからこそ、技術の先にある「ビジネスへの貢献」を強く意識し、人間関係の構築や要件定義のスキルなど、AIには代替できないソフトスキルを磨き続けることが、これからのキャリアを決定づける最重要ポイントとなります。

SIerはやめとけと言われるAI時代のキャリア判断まとめ

ノートパソコンの画面に表示されたコードとキャリアの羅針盤を意味するコンパスが並んで置かれているデスクの風景

AI技術の急速な進化により、「SIerはやめとけ」と言われる理由は、従来の労働環境の過酷さから、代替可能なスキルしか身につかないことへの危機感へと変化しています。自身のキャリアを守り、育てていくためには、現状の立ち位置を客観的に評価し、次の一手を行動に移す必要があります。

本記事の要点は以下の通りです。

  • 単純な調整業務やコーディング作業はAIに代替されるため、上流工程やAI連携の知見を深める必要がある。
  • 多重下請け構造に依存した人月商売は崩壊しつつあり、圧倒的な生産性か独自の専門性を示すことが生き残りの条件となる。
  • 自社の環境で最新技術に触れられない場合は、個人学習や副業を通じて市場のトレンドとのギャップを埋める行動が急務である。
  • ユーザー系SIerでは、親会社のビジネスを深く理解し、AIツールを用いた業務改善を提案するコンサルティング力が求められる。
  • 未経験者や文系出身者は、ゼロからのコーディング力よりも、プロンプトエンジニアリングやAIを活用した素早い開発力を武器にするべき。
  • 大手企業の看板に安住せず、常に市場価値を意識し、技術がわかるマネジメント層を目指すことが真のリスクヘッジとなる。
  • いかなる属性であっても、技術はビジネス課題を解決する手段であると認識し、AIにはできない「人間中心の課題解決力」を磨くことが重要。

AIはエンジニアの仕事を奪う敵ではなく、圧倒的な生産性をもたらす強力なパートナーです。現在の環境に不安を感じているのであれば、まずは日常の小さな業務からAIを活用する習慣をつけ、自分にしかできない「価値の源泉」がどこにあるのかを見つめ直してみてください。自らのスキルをアップデートし続ける意志がある限り、AI時代はエンジニアにとってこれ以上ない飛躍のチャンスとなるはずです。

参考情報・出典

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